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「真那ちゃん、息子の湊だよ。これから一緒に生活するから、宜しくね」 お父さんは僕の肩に手を乗せながら言った。お母さんになる人に連れられて来た真那を初めて見た時、まだ幼い僕はただ綺麗だと思った。 長い黒髪は艶があって、肌は白く透き通るみたいで、唇はピンク色をしていた。童話のお姫様みたいな女の子。 僕が七歳で、真那は十二歳。突然出来た綺麗なお姉ちゃんに、僕は夢中になった。家では何をする時も後をついて回って、眠る時以外はずっと真那の部屋に入り浸った。真那は中学生になってたから、思春期ってやつだったけれど。 僕が真那に甘えると、真那も僕を甘やかした。きっと恥ずかしかったと思うけど、一緒にお風呂に入りたいって言えば叶えてくれた。僕の頭を洗ってくれる真那の優しい手が好きだった。 「マナ、マナ。背中もゴシゴシして」 「湊はお姉ちゃんって呼んでくれないの?」 「うん。マナはマナだから」 真那をお姉ちゃんと呼ぶのは、幼心に嫌だった。この綺麗な人は僕のだと、子どもながらに独占欲が生まれていた。 「マナ、一緒にかえろ」 小学校と中学校はほとんど隣にあったから、僕は毎日真那を迎えに行った。 中学校の方が終わる時間が遅いから、それまでずっと校庭で待ってたけど。そのうち保健室の先生が中で待ってていいよと言ってくれて、僕はその日から保健室でマナを待つようになった。 毎日マナを迎えに来る男子小学生は、とても目立ったし、マナも友達に揶揄われたかもしれないけど。いつも嬉しそうに笑ってくれた。 マナは綺麗だから一緒に帰ろうとする男も多くて、僕はいつも気が気じゃなかった。いつだって僕がマナの一番で居られるよう、マナを独り占めした。
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