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僕は高校二年になり、もう真那が欲しくて仕方なかった。真那が就職に伴って一人暮らしを始めてしまったから。大学だって家から通ってくれたから、きっと卒業しても傍に居てくれると思い込んでいた僕には誤算だった。それでも、実家から電車で一時間程の距離。真那中心の生活だった僕は、毎日のように真那のアパートを訪ねた。 部屋に男の気配がないか、いつも気にしながら。僕の心配を他所に、真那は上機嫌で紅茶を淹れてくれている。真那がカップを目の前に置いてくれて、僕は一口飲む。ジッと見ている真那の視線が心地良い。そう、真那はずっと僕だけ見ていればいいんだ。 「湊、今日は泊まらないで家に帰って」 「何で」 「お義父さんとお母さん、湊がこっちに入り浸ってるから心配してるみたい」 真那はさして気にしていない風に言った。そう、仲が良すぎる僕らを、両親はずっと気にしている。子どもの頃は微笑ましそうにしていたけど、今は凄く気に揉んでいるみたいだった。血が繋がらない姉弟が…弟が姉に欲情しているのは、両親にとって気持ち悪いのだろう。どう思われていても、僕が真那を愛する気持ちは変わらないけれど。せめて成人するまでは、気持ちを汲み取ってあげようか。僕は不貞腐れた顔のまま、頷いた。「またすぐ遊びに来ていいから」そう言って頭を撫でてくる真那の目には、僕は七歳の頃のまま映っているんじゃないかってたまに本気で思う。 真那のアパートを出て、家に戻って。けれど小言を言われるのも嫌だったから僕は静かに部屋に戻ろうとした。リビングからは両親の声が聴こえてくる。少し言い争うような声に、僕は興味を引かれて聞き耳を立てた。 「…あの子達、血が繋がってないと思って男女の仲になったりしてないかしら」 「昔から仲が良いからなぁ…。特に湊の執着心は凄い。あいつにはそろそろ、半分血が繋がっている事を伝えた方がいいかもなぁ」 「あの時の私達って不倫関係よ? 嫌悪感を持たれるかも…。あなたは真那の義父で、湊君は血の繋がらない弟って方が都合良い。でも…二人がそれで恋愛感情持つぐらいだったら、早く言うべきだったかも…」 「まだ分からんさ。湊が成人する前には言った方がいいよなぁ…。好きになっていて、落胆しないといいんだけどね…」 そんな両親の言葉に、僕は心の底から喜びを感じた。 血が繋がってたら落胆する? とんでもない。半分でも真那と同じ血が流れているなんて、幸せ以外ないよ。真那を好きなのは、血が繋がらないからじゃない。きっと真那は、この真相を知らない。だったら、知られてしまう前に… 血の繋がらない弟の内に、真那を僕のモノにしてしまわないと。 僕は次の日を待ち遠しく感じていた。
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