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隣で眠っている湊の髪に触れる。柔らかい癖毛は子どもの頃のまま、ふんわりとしていた。初めて会った時から、とても可愛い湊。小学生の頃は女の子みたいな顔をしていて、食べちゃいたいくらい可愛かった。成長した今も、もちろん可愛い。私の湊。頬にそっとキスをすると、私のスマホが震えていた。母からだった。湊を起こさないようにベッドを抜け出して、電話に出た。 「真那、そっちに湊君行ってるの?」 「うん、いるよ」 私は眠っている湊を見つめながら言った。母は一度言葉を切り、躊躇いながら絞り出した。 「あのね…真那の本当のお父さんの話なんだけど…」 「知ってる」 「え?」 「私、ずっと昔から気付いてたよ。何となくだけど、そうかなって」 「じゃあ、湊君とは…」 「大丈夫、関係ないもの」 私の大丈夫、という言葉を都合良く受け取った母は、ホッとしたように溜息を漏らしていた。 「あ、湊にはお父さんの事…伝えないで。私が知ってる事、知られたくない」 「え…どうして」 「お願いね」 電話を切って、またベッドへと戻る。隣の湊の胸に頭を寄せると、寝惚けた湊は私の頭をギュッと抱き寄せた。男らしくなった胸板。逞しい腕。それでも可愛い、私の湊。 関係ないもの、血の繋がりがあるかどうかなんて。 私にとって湊は湊。一番大切な存在。 それでも私が血の繋がりを知らないと思って一歩踏み出してくれたのなら。 湊にとって私は“事実を知らないから血の繋がらない弟を好きな姉”でいたい。湊がいつか私から離れたくなった時に、血の繋がった姉に罪悪感を持たないように。 まぁ…私は… 「湊を手放す気、一生ないけどね…?」 この気持ちは秘密。湊にはずっと隠すの。 だって湊が私を切なそうに見て、追ってくるのが幸せなんだもの。 寝惚けながらもぎゅうぎゅうと抱き締めてくる湊に、私はキスをした。
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