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「ねぇ真那(まな)、今何考えてる?」 いつものようにふざけ合って、擽るような戯れをして。 勢いの弾みで真那をベッドに押し倒してしまった僕に、彼女は戸惑うでもなく、僕を意識して身を固くする訳でもなく。いつものように穏やかに微笑んで、その温かく優しい手で僕の頬を撫でている。瞳は真っ直ぐ僕を見据えて、この世界には他に見るものなんて何もないって態度で僕を撫でる。普段だったらこのまま抱き締めて、また猫の子のようにじゃれる僕達だけれど。 「ねぇ、真那。答えてよ」 頬を撫でてた手を僕の首元へ滑らせ、喉仏を指でなぞって遊んでいる。真那は僕の喉仏を触るのが大好きだ。成長と共に現れた、自分とは違う“性”を楽しんでいる。ちょっと擽ったいけど、真那に触れられる時間は好きだから、そのまま自由にさせておく。 「私の(みなと)は、今日も可愛いなぁ」 「それが今考えてる事?」 「そうよ」 真那は何でもない事みたいな顔で言った。 「…いつも通りだね?」 「そう、私の湊はいつも可愛い」 この状況に対する感想を聞きたかったから、そういう答えを求めてなかったんだけど。天然な真那に僕が何か言っても無駄な事は嫌と言うほど分かっているから。 僕は愛情いっぱいといった表情の真那の目を片手で塞いで、そのままキスをした。柔らかい唇は拒絶する事無く受け入れて、包み込んでくれた。 真那が僕を受け入れるのは分かっていたけれど。それでも嬉しかった僕は。 何度も何度も、彼女の唇に覆い被さった。
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