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私は、愛の小さな手を引いて歩いていた。愛は、桃色をした うさぎの人形を大切そうに抱きしめ小さな歩幅で一生懸命に 歩いている。 愛の母親、つまり私の妻が姿を消したのは1年も前だった。 会社で仕事をしていた私のスマホに幼稚園から連絡が入った のは、雨の降る肌寒い日だった。迎えに来る筈の妻が現れな い為私に連絡がきたのだ。会社を後にし幼稚園へ急いだ。 幼稚園の建物の軒先にポツンと佇む娘が見えた時の胸の痛みは 一生忘れられない。今と同じ様にうさぎの人形を両手でギュッ と抱きしめボンヤリと雨雲を見上げていた。私に気付いた娘は 途端に笑みを浮かべ小さく手を振ってきた。これ以上ない愛お しく思える存在は他に無い。 愛の手から伝わる温もりに生の喜びを感じた。お前がいるから 私は生きていける。 愛、愛をありがとう。 私は、共に生きていく。 この隠し子と。
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