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その少女は蛇蝎の如く
私にココロがあったなら
私を信じてくれたあの人は
嫌われ者のその人は。
私の瞳に綺麗に写っただろうに。
私のココロが動いただろうに。
私は、ココロを集める旅をした。
これはとある島に寄った時の話。
何の変哲もない普通の島で、外から見ても特にこれといった特徴もないありふれた島だった。ちょうど食料も切れていたから、なにか補給出来ればと、軽い気持ちで寄ったんだった。
私は船乗り。名をアマミと言う。
広い海の上を旅する1人の少し魔法を使える少女である。
その島の入口に着くと門番がいた。
と言っても門がある訳じゃなくて、石を積み上げて作られたアーチが入口の役割になっていただけだが。
「入島希望ですか?」
「はい」
「そうですか。こんな辺鄙な島によく来ましたね。軽く手荷物検査をさせていただきますね。」
「はいはい。」
私は手を横に広げて体のラインに手を添えられ、ボディチェックをされてしまう。最近思い始めたんだが、これはセクハラにはならないんだろうか。
そして、
「この銃は?」
「護身用です」
腰の後ろに携えていた私の銃。これはもうずっと使っている愛用品だ。
魔法が使える。と言っても些細なもので、本の世界の主人公みたいに火の玉を出して戦ったり、瞬間移動ができるような大層なものではないんだ。だから私は銃を使うのさ。
「ふーん。変に使わないでくださいね」
「大丈夫ですよ……」
「……。それから貴方の船ですが、そこに停めて 頂きます。」
と、門番が指を指す方には波止場があった。既に何隻かの船停められていた。
多分この島の人達のものだろう。
私は「了解です」と言った後、軽く会釈して、そこに自分の船を移動させた。
「船に乗って入島できないってことは、必要な荷物だけ持って入れって事だな。」
要らないものは船に置いておくとして……。
私は必要最低限の荷物をリュックサックに詰め込み、島に入っる。
しょぼい門をくぐってしばらく歩くと
しょぼい石畳の地面が現れ、
『ようこそ』と書かれたしょぼい看板と共に、赤いレンガ造りの建物が見えだした。
至って普通のしょぼい町……と言った感じだ。
こういう普通の街並みは嫌いじゃない。むしろ好き。いや、そんなことはどうでもいいんだ。とりあえず私の行先は1つ。
「お腹空いたな。」
船に備蓄してた食料が切れてしまってからろくなものを口にしていない。
今ではどんなものでも美味しく感じそうだ。
まぁ、どうせなら美味しいものを食べたいけど。。。
私はとりあえず、この島のことが知りたくて……というか、飲食店を見つけたいが故に視界に入った人に話しかけてみることにした。
「ちょっといいですかー?」
「ん?なにかね?」
声をかけられた白いお髭のおじさんは少しびっくりしていたが、優しい返答をしてくれた。いい人そうで良かった〜。
「私旅人なんですけど、この島のこと教えてくれません?大体でいいので」
「ふーむ。旅人さんか。こんな地味な島によく来たもんだね」
「地味ほど魅力的なものはありませんよね」
「変わり者じゃのぉ。」
と、長い髭を擦りながら言う。
さながら仙人のような風格を漂わせて……
いや冗談。ただの温厚なおじいさんである。
「ここの有名な食べ物はなんです?特産物みたいな」
「うーむ。特にはないのぉ。強いて言うなら青魚かのぉ。なんせ、島じゃからのぉ」
「……」
私は船乗りであり、旅人だ。船に乗りながら旅するが故に、船の上で魚を釣って食べたりすることもある。
めんどくさいし生臭いから、よほど食糧難の時以外はしないんだけど。
つまり、つい先日、食糧難に陥っていた私は船の上で孤独に釣っていたのさ。
だから正直に言うとお肉とかを食べたいところだが。。。
「お気に入りの店があってのぉ。あそこの魚料理 が絶品で絶品で。」
頬を赤面させ、食べた時のことを思い出したのか、幸せそうに表情が緩む。
「そんなにですか」
「そんなにじゃ。」
そこまで言われたら気になるではないか。
「では、そこ行ってみます」
「うむ、達者でな」
「達者て……」
やはりこの人は仙人なのではないだろうか。
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