10人が本棚に入れています
本棚に追加
「もう会わない、絶対に会わない」
「なんでだよ、いいのかよ、このままで」
「いいの。今のままで。墓まで持っていく隠し事は、私が犯した罪の一生掛けての禊」
「なんだよ、それ。本当に言わないのか」
「言わない」
「お前の天秤はどっちに傾いてたんだよ」
「それも言わない」
「いいんだな、それで。これっきりで」
「いいの、あなたとはこれっきりで」
「後悔しないか」
「しない」
「絶対?」
「絶対」
「禊って、自分に嘘ついて生きるって意味じゃないのか」
「違う。絶対違う」
「そうか。けど、その子は」
「この子は間違いなくあなたの子。こう話すのは今日が最後。この事実は墓まで持っていく」
**
可愛い我が子をあやしていると、自分に似てると思えてくる。
血、繋がってないのにな。
穏やかに過ぎていく妻と子供と三人の暮らし。
僕は知ってるよ。
でも、これは墓まで持っていく僕の隠し事。君たちを守る為に。
最初のコメントを投稿しよう!