不均衡なわたしたち

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わたしの暮らしぶりに特別変化が見られないことに安心した美琴は、問わず語りにぺらぺらと近況報告を始める。 今会社で任されているビッグなプロジェクトのこと。自分のことが好きで好きで仕方のない夫のこと。手入れの大変なくらい広い住まいのこと。 すべてが愚痴を装った自慢だ。でもわたしはいちいち神妙にうなずいてみせ、「いいなあ」「すごいなあ」と甘美な溜息をついてみせる。わたしの反応に気を良くした彼女が小鼻を膨らませてさらに喋るのを、そっと観察する。 「木綿子の方は? ぼちぼち?」 マシンガンのように喋りきった美琴は、わたしに水を向ける。 「ぼちぼちですねえ」 食べ終えたケーキ皿のカスをフォークの先でつつきながら、わたしは自嘲気味に微笑んでみせる。
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