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ジェイドは顔を真っ赤にすると何か言いたげに口を大きく開けたが、すぐに家の中に入ってきた。それを私は笑顔で迎える。
「お茶でも飲む?」
「いや、いい。急いでるんだ」
そうは言いながらも、私が飲み残した紅茶を一気飲みし、濡れた口元をマントで拭った。
「あぁ、明日は仕事なんだって?」
やはり、探りを入れたかった。私には分かる。たぶんジェイドは好んで黒猫になったわけではない。
彼は俯いたので、その表情は見えなくなってしまった。
「そう。最後の仕事」
「ようやくかい」
「そう。ようやくだ」
それは、彼がこの死神業から足を洗えるという意味か。それとも黒教徒達がもはや、新たな女子供を必要としなくなっただけなのか。何にせよ、ほっとする自分がいた。
ジェイドの影がゆらりと揺れる。
「だから、ダリア。俺を祓ってほしい。持ってるんだろう?」
「祓うって……もしかして、岩塩のことかい?」
私は北の国に行って、巫女の修行を重ねてきた。かの国では、悪霊や悪魔を祓うのに、聖域にある塩湖で採れた岩塩を使う。私はいつも小袋に入れて腰から下げていたし、今もそうだ。
「お前、まさか悪魔と契約したのか」
肯定を表す無言。私もすぐには次の言葉が出なかった。
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