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巫女は悪魔を祓うと、その邪悪な力の一部を聖なる力に変換して自分のものにできると言われている。だから、経験を積めば積む程巫女は力をつけていく。でも、私はジェイドを使って強くなんてなりたくない。
「早く。もう始まってる」
突然ジェイドは黒い煙を吐き始めた。これは、いよいよ彼の身体が悪魔に乗っ取られる前兆。
もう、やるしかなかった。
「ジェイド!」
慣れた手付きで、小袋から取り出した岩塩を振り撒く。私がステップを踏むと、清めのスパークルがジェイドを包んでいく。最後に、巫女修行の師匠から授けられた特別の術式を両手で構築し、そのキラキラと黄金色に光る魔法陣を彼に向かって叩きつけた。
できることは、終わった。
「ダリア、好きだよ」
ジェイドの身体が足元から消えていく。人間として終わらせてあげたかったのに、間に合わなかったのだろうか。
「ほんと、今更だよ」
「あぁ、初めからこうすれば良かったのかも」
「ジェイド」
私は肩で息をしながら、真っ赤に泣き腫らした目を擦った。せめて、彼の最後をこの目に焼き付けたくて。
「ダリア、ありがとう。これを」
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