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ジェイドが最後の力を振り絞って、マントの中から何かを取り出す。白銀色の円形のもの。
「ジェイド!!」
ジェイドの下半身が消えて、その後は頭と何かを差し出した腕だけが残り、最後は手だけが残った。
そして、ジェイドは消えた。
その瞬間、カランカランと音を立てて床の上に落ちたもの。
「まだ持ってたの」
ソイルライムの魔石だった。大昔、私が彼の誕生日にあげたもの。
拾い上げて、無意識に唇へそれを寄せる。冷たい感触からじわりと生温かいものがこの身に流れた。これは聖なる力。そして、密やかな願い。
「ごめん。私もずっと好きだったんだ」
私の涙が一滴、魔石の上にポタリと落ちた。その瞬間、魔石は私の掌の中で急激に質量を増したかと思うと、その下方からたくさんの触手が伸びて、縦横無尽に動き出す。ソイルライムが、銀色に艶めいていた。まるでジェイドの髪のように。
私は、音も立てずに笑った。
「こんなオバサンでもいいなら、ついておいで。そしたらもう、離してあげないから」
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