巫女とスライム

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巫女とスライム

 この町に、黒教徒と呼ばれる殺戮集団の声明が発表されたのは昨日のことだった。  彼らは崇める神への供物として、各地から無差別に女子供を集めている。私が長い旅から故郷であるこの町に戻ったその日に起こった激震。ちょうど町長宅で、留守の我が家を長きに渡り管理してくれた礼をしていた時に、その矢文は届いたのだった。 『明日、神聖なる漆黒の灯火のため、黒猫に供物を託されよ』  町長の顔はみるみるうちに悪くなった。大抵、街一つにつき必要とされるのは三人。責任感の強いこの町長は、彼の愛娘達二人を捧げる覚悟らしい。もう一人はどうやって確保するのだろうか。  私にも娘がいる。手紙一枚届かないが、それこそが達者の便りというものだろう。そう信じるしかない。と同時に、ある一人の少年について思いを馳せた。
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