姥捨て山

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「帰ったら愛美ちゃんに電話して訊いてみるよ。来週お母さんんに会ってくれるかどうか」  おじさんは頬をあげてにっこりする。 「俺も混ぜてくれないかな。そうだ。このファミレスできちんと紹介すればいいじゃないか。その前か後にまた山に登ろう。アケビも採りごろになっていると思うよ」  お母さんは「そうですね。また南沢さんに会いたい」と言っている。なんか良い雰囲気だ。おじさんみたいな人がお父さんだったらいいな。  次の週、愛美ちゃんを含めて四人で同じ山に登った。まだ紅葉はしていないが時おり吹いて来る風が真夏の熱風と違った。秋という季節を深く感じさせられた。  愛美ちゃんとお母さんは最初あまり喋らなかったが段々と打ち解けてきてくれた。  頂上に行くと愛美ちゃんがリュックからお弁当箱を出した。 「四人分作ってきたの。美味しいか分からないけど……」  調理部だから腕は間違いないだろう。僕も簡単な料理はするが、このお弁当みたいに手の込んだものは中々作れない。ポテトサラダにきんぴらごぼう、ミートボール、だし巻き玉子。どれも時間が掛かる料理だ。  お母さんはまた涙を膝の上に落とした。 「お母さん、最近よく泣くな」 「今日泣いた理由は先週とは違うの。これは嬉し泣き」  おじさんがポケットからハンカチを取り出す。
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