白の世界

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男1「あの、すみません。皆さん、なんで歩いているんですか?」 男2「はぁ?」 男1「いや、だから、なんで歩いているのかな?と思って。」 男2「歩くの嫌ならそこら辺で座っていればいいじゃねーか。」 男1「そういうことじゃなくて、この先に何かあるのかな?」 女1「あなた馬鹿? 私たちここにいるのよ?」 男1「はい、そうですが、、」 女1「じゃ、この先の事なんてわかるわけないでしょ? 違う?」 男3「まぁ、そう言ってやるな。 不安なんだよ。 俺もそうだった。」 女2「でもね、ほんとよ。 嫌だったら座ってればいいの。 ただし、いつまでも座ってると石みたいになっちゃうから気をつけて。」 男1「あの向こうに見える島みたいなのは?」 男2「はぁ? どこに島なんてあんだよ?」 男1「ほら、あそこ。」 女1「あんたも? たまになんか見える人いるみたいなんだよね。 あたいには見えないけど。」 女2「私は見たことある。 でも、人によって見えたり見えなかったりするみたい。」 男3「あれはな。 可能性なのさ。」 男1「可能性?」 男3「あぁ、それぞれが持つ可能性。 前は見えたけど見えなくなっていく。 可能性とはそんなもんだ。」 女1「じゃ、あたいはもうノーチャンスか」 男2「俺もだ、もうこんな歳だしな。」 女1「でも、そんなとこにどうやって行くのかな? この道、一本道なのに。」 男1「え? いくつか枝分かれしてますよ? 島によってはいく道ないのもあるけど。」 男2「道があるのか、、 それも行ける奴にしか見えねーってか。」 男3「道の見えない島はな、他の島から道が伸びてるんだよ。」 男1「詳しいですね。」 男3「若い頃に行ったことがあるんだよ。」 女2「どんなとこなんですか?」 男3「島ごとに色がね。」 女1「色? それだけ?」 男3「あぁ、俺が行ったところはな。」 女2「なんの変化もないのですか?」 男3「体や心に色が染み込んでいくような感覚があった。 あと、島から帰ってきたばかりのやつは暖かい感じがした。 君も見えてるんだったら行ってみたらどうだ?」 男1「そうですね。」 女1「あたいもついて行こうかな?」 男3「あまりお勧めはしないが。」 女1「えぇ、どうして? なんか、楽しそうじゃん。」 男2「でもよ。 どうやってついて行くんだ? 道は見えてるのか?」 女1「見えてないわよ。 だから、後ろをついて行くの。 ダメかな?」 女2「行けなくはないでしょうね。」 女1「あんたも行く?」 男2「いや、俺はいい。 もう、今更だ。」 女1「あっそ? じゃ、いこうよ。 見えてる人。」 男1「え、あ、あぁ」 男3「いいんじゃないか。 本人が行くって言うんだから。 どうなるかは俺は知らない。」 女1「出発進行!」 男1「なんか、足元が暖かくなってきた。」 女1「そう?あたいはなにも感じないけど?」 男1「景色も少しづつ、、」 女1「あ、あんたの足。 色が。」 男1「ほんとだ。 緩やかな音楽も聞こえる。」 女1「なんで、あたいは何も変わんないよ? 暖かくもないし、色もないし、音楽も聞こえない。」 男1「ほら、みんな楽しそうだ。」 女1「なんで、、あたいだけ、、みんな、、みんな、、わぁぁぁ!」 男1「だ、大丈夫ですか? さ、帰りましょう」 女1「いや、こんな所、、わーん。」 男3「帰ってきたみたいだな。」 女2「なんか、早かったわね。」 男2「何もなかったんじゃねーのか?」 男3「おーい大丈夫か?」 男1「ちょっと彼女がね。」 女1「もう、あんな所に行きたくない。」 女2「じゃ、少し休んでから。」 男2「え?この女のこと待つのか? 俺は嫌だぜ、置いて行こうや。」 男3「そうだな、当分立ち直れない感じだしな」 女2「意外と薄情なのね?」 男3「見つけたい先があるからな。 残りたいなら君は残ればいい。」 女2「そう?私はもう少しここにいるわ。 彼女に聞きたいこともあるし。」 男2「聞きたいこと?」 女2「こんなになっちゃうのよ? 何があったか聞きたいの。」 男2「聞きたいって、話せるのか?」 女1「だ、大丈夫、、、、取り乱して、ダセ。」 女2「何があったの?」 女1「あそこは楽しそうだった。 みんな真っ白じゃなくて色が付いてて、2人ほど鮮やかな色の人がいたの。」 女2「色の世界なのね。」 女1「島についたら歓迎されて、と思ったんだけど歓迎されてたのはこの人だけで、私には誰も気がつかないの。 私だけ真っ白のまま。」 女2「なんか切ないわね」 女1「でも、楽しそうに話ししてるから会話に入ろうとしたの。 そしたら、こいつが言うんだ。 皆んなから君は見えていないようだって。」 男1「俺からもじょじよに消えていきそうだったからね。 だから君の手を握ったんだ。」 女1「そうだったんだ。キモいとか言ってごめん。」 男1「いや、俺こそごめんな。」 男2「それで? どうなったんだ?」 女1「よく見たら、離れたとこに色の薄い人達がいて、私を呼ぶんだよ。 見えてるじゃんて思って近づこうとしたら、泣き出しそうになるほどの嫉みや憎しみが体に入ってきて。」 男1「なんかやばそうだから連れて帰ってきたんだ。 まだうっすら見えててよかった。」 男3「なまじ才能があるために他人の才能を羨むものはいるからな。 もちろん、諦めて出ていく者や仲良くやれる奴もたくさんいるんだけどな。」 女2「だったら、その人たちはなぜ出ていかないのかしら? いても辛いわよね。」 男3「ガキの頃にいい想いをしたんだ。 狭い世界だと少し才能あるだけでチヤホヤされるから。それが通用しない世界でも他に自信あるものがないと執着するんだ。」 男2「過去の栄光ってやつか。」 男3「そういうのに縛られて動けなくなるんだよ。 楽しむやつには他の島への道も見えたりするんだけどな。」 男2「詳しいな、おっさん」 男3「おっさん言うな。 まだ32だ。」 男1「あんたは経験者なんだろ? 島に行ったら、なにかあるのか?」 男3「お前はどう感じた?」 男1「まず足元から暖かくなってきて、徐々に色がついていく。 周りの人を見る限りでは、色のつき方や濃さは人それぞれ。」 男3「そうだな。」 男1「色濃さは滞在時間とか関係してるのか?」 男3「いや、違う。」 女1「そうよね。 この人もすぐに鮮やかな色になったから。」 男3「でも、心配すんな。 あんたにだってきっと行ける島がある。」 女1「ほんとに?」 男3「希望は捨てんなよ。」 女2「じゃ、私たちは行くね。」 女1「あ、私も行く。 本当にあるなら、行きたい。 絶対行ってやる。」 男2「ほぉ。 ちょっとした事で変わるもんだな。 今のその顔なら見つかるかもな。」 男1「絶望して諦めたら可能性はゼロだもんね。 希望を持つ限り可能性はゼロじゃない。」 男2「どっかのアニメみたいな事言ってんじゃねーよ。」 女2「でも、あるなら見つけたいわね。 私の可能性。」 女1「うん。 見つけに行こう。」 男2「仕方ねーな。 付き合ってやるよ。」 男1「才能という名の可能性。」 男1「よし、これで全員島に行けた。」 女1「本当にあったんだ。 私なんて空っぽな存在だって思ってたのに。」 女2「私も少し自信がついたわ。」 男2「でもよ。 この後どうすりゃいいんだ? ただ歩いていくだけ?」 男3「この道の先に、旅立ちの館があると言われてる。 自分の可能性を蓄えてそこから旅立つんだそうだ。」 男1「それで皆んな微妙に歳が違うのか。」 男3「そう言う事だ。」 女1「どういう事よ?」 女2「才能ある人は島がいっぱい見えるから、色々回ってると時間がかかるって事。」 女1「ああ、そっか。 私はあまり見えないから皆んなより若いのね。」 男2「そう言えば人が増えてきてねーか? 皆んなあの丘の向こうを目指してるみてーだ。」 男3「いよいよ旅立ちの館なのかもな。」 女1「あっ!島と道みっけ!」 男1「そこの左斜めの大きな木が一本ある島?」 女1「そうそう! あんたもみえるの? ねーねー、一緒に行こうよ。」 男1「よし、行こうか。」 男2「ん?俺は先に旅立ちの館とやらに行くぞ。」 女2「どうぞ。 ここまで来たんだし、私はあの2人を待ってる。」  男3「そうだな、袖すり合うも他生の縁て言うしな。 俺も待ってるわ。」 女1「ねぇ、なんか懐かしい匂いがする。」 男1「え?君もかい? それに、あそこにいる犬、見覚えがあるな。」 女1「めっちゃくちゃ尻尾振ってるね。」 男1「そして花壇があって。」 女1「小さな一戸建ての家。」 男1「ウッドデッキ。」 女1「手作りのオーブン。」 男1「泣けてくるほど懐かしい。」 女1「2人で作った。」 男1「だから初めて会った気がしなかった。」 女1「私もあなたを知ってた。」 男3「よぉ、どうだった?」 女2「どうしたの?手なんかつないで。 一気に急接近?」 男1「俺たち」 女1「私たちね」 男1「結婚してたんだ。」 女1「そう、どこかで一緒に暮らしてた。」 女2「へぇ、そうなんだ。 なんで今まで気がつかなかったの?」 男1「島でね」 女1「懐かしい光景がいっぱいで。」 男1「そしたら、記憶がつながったんだ。」 男3「これも縁かね。」 女2「よかったね。 じゃ、旅立ちの館へ行きますか。」 男1「そうですね。」 女1「ねぇ、あなたもっと可能性見つけなくていいの? 島見えてるんだよね?」 男3「行けるならいっといたほうがいいぞ。」 男1「いえ、皆さんと一緒に行きます。」 女2「もったいない。 可能性は少しでも多い方がいいわよ?」 男1「はい、だから可能性の多い方に賭けるんです。」 女1「え?」 男1「生まれ変わっても、君とまた巡り会える可能性に!」
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