一、

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衝動が彼に活力を与へた。 荷物に入れてゐた手拭ひで簡単に傷口の止血を済ませた猟師は、脇目も 振らずに歩き続けた。時折周囲の物音に驚いて歩みを止める事はあつても、 其れより他の事で足を休める事は無かつた。 食事も歩きながら摂り、睡眠は摂らなかつた。 生きて還れぬかもしれぬ、と云ふ諦念など、今の彼には無かつた。 さうして苦節三日の後、彼は終に集落へと帰還したのである。 其れも左手の殆ど使へぬ状態の中で、であつた。
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