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衝動が彼に活力を与へた。
荷物に入れてゐた手拭ひで簡単に傷口の止血を済ませた猟師は、脇目も
振らずに歩き続けた。時折周囲の物音に驚いて歩みを止める事はあつても、
其れより他の事で足を休める事は無かつた。
食事も歩きながら摂り、睡眠は摂らなかつた。
生きて還れぬかもしれぬ、と云ふ諦念など、今の彼には無かつた。
さうして苦節三日の後、彼は終に集落へと帰還したのである。
其れも左手の殆ど使へぬ状態の中で、であつた。
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