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集落に還つて来た猟師を見た人々は、驚きを隠し得なかつた。
山に入つて十日ばかり還つて来なかつた彼は、もう死んで了つて居るものと
考えられてゐたからである。而し、其れにも増して人々を驚かせたのは、
彼の格好の余りの酷さであつた。
服は其処彼処が枝葉に引つ掻かれて裂けて居り、左腕には血に紅く染まつた
手拭ひが、巻かれたままぼろぼろになつてゐた。
貧血の為に体が小刻みに震えるので満足に体を支へる事も出来ず、最早
生きているのが不思議、と云ふ有様であつた。
当に執念に依つて彼は還つて来たと云へるだらう。
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