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大木翁の記憶によれば、其れは日没に近ひ頃合ひであつた。
翁は丁度夕食の支度を始めたところだつたが、竈門に火を入れやうとした
時に、誰かが戸を叩く音がしたと云ふ。平時とは違ふ、何処か焦りを感じ
させるやうな様子で続け様に叩かれるものだから、何事かと思つて戸を
開けたところ、其処には蒼白な顔をした集落の者が二人立つてゐたと云ふの
である。
二人の顔色を見て大木翁は即座に何か大事が起こつた事を察知した。
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