7人が本棚に入れています
本棚に追加
/50ページ
野犬に襲われたとしても此ふはなるまい、と翁は思つた。
不思議の感を抱いた翁は何者に襲われたのか、と猟師に問ふた。
猟師は分からぬ、と答へるばかりであつた。ただ黒々とした大きな獣が
我の腕に噛みつひて来た事のみ覚へてゐる、とも語つた。
其れを聴いた翁は、戦慄した。
傷の異様な大きさは、彼を襲つたのが巨大で強力な獣であつた事を示して
ゐる。其れと猟師の証言を併せた時、彼を襲つたのは熊か狼、その孰れかと
しか考えられなかつたのである。
最初のコメントを投稿しよう!