ニ、

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とは云へ、獣の正体の何たるかを知るのは、決して並大抵の事ではなひ。 正体を知る為には其れだけ獣に近付かねばならぬ。少なくとも数年は山中で 狩猟を続けて来た猟師達でしか、其の探索行の孕む危険を耐え抜く事は出来ぬだらう。少なくとも大木翁には出来ぬ事だつた。 其の外、獣の襲撃から集落を守る柵を作つたり集落を巡回して住民を警護したりするやうな事でも、猟師達に協力を仰がねばなるまい。其の上獣を討伐しやうと云ふ事にでもなれば、愈々、彼等の力無くて事は進まぬだらう。 此れらの事を踏まえて考へた結果、自身に課せられた責務を遂行する為には 猟師達の協力が不可欠であると、翁は結論付けた。 翁は詰まる処、己一人の力では今回の件に関し、何事も為し得ぬ事を悟つた のである。
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