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夜明けと共に幾らかの荷を背負ひ、猟銃を一丁手に持つて翁は出発した。
傍らには件の護衛も連れてゐる。集落から山に入り、草が生ひ茂つて獣道の
やうにしか見えぬ道を掻き分けながら進み、一時間近く歩いたところで
やうやく勘助の庵に着いた。
猟師の朝は早ひと聞ひてゐたから、彼はもう狩に出て了つて居るかもしれぬ、と 翁は少々危惧してゐた。而し、幸いな事に勘助は庵で寝て居つて、出掛けてはゐなかつた。
何でも数日前、十日がかりの猟から還つて来たばかりだと云ふ。寝起きの所為か幾分疲れたやうに見える勘助の表情に若干の申し訳無さを感じつつ、挨拶も其処其処に、翁は本題を切り出した。
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