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其の頼みを聞いて、勘助は少し逡巡する様子を見せたが、程無くして此れを
承諾した。さうして話は具体的な方面へと移つて行つた。
翁の挙げた課題を要約すると、次の通りとなる。
一、先ず獣の正体を明らかにせねばならない
ニ、獣が集落周辺に現れた場合に備え、警戒態勢を作らねばならない
三、実際獣が襲撃して来た場合、如何様にして此れを防ぎ、集落の安全を
確保するのかを考へねばならない。
此れに対し、勘助と翁が相談した結果は下の通りとなつた。
一、獣の正体については、勘助を中心とする五名の熟練猟師から成る
調査隊を組織して、其の解明に当たらせる。
ニ、獣の接近に対する警戒については、中堅猟師を中心とする、五名の猟師
から成る集団を合わせて四個作り、交代で山中の見回りに当たらせる。
三、未だ獣が襲撃して来る可能性の高低は判断できて居らぬ上、此れから
田植えの時期がやつて来る事もあり、集落住民の避難、防護柵の建設
等の対策を取る事は、住民の反発を招くと予想され現時点では
難しひ。
但し実際獣が襲撃して来た場合に備へ、猟師以外の者が山中に立ち
入る事を原則として禁止する他、夜間は玄関扉から窓に至るまで
家の全ての開口部を厳重に封鎖し、決して外出はせぬやう各世帯に
通達するなど、最低限の策は執る事とする。
此れに加え、中堅猟師五名より成る集団を組織し集落の夜警に
当たらせる。
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