三、

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其の頼みを聞いて、勘助は少し逡巡する様子を見せたが、程無くして此れを 承諾した。さうして話は具体的な方面へと移つて行つた。 翁の挙げた課題を要約すると、次の通りとなる。  一、先ず獣の正体を明らかにせねばならない  ニ、獣が集落周辺に現れた場合に備え、警戒態勢を作らねばならない  三、実際獣が襲撃して来た場合、如何様にして此れを防ぎ、集落の安全を    確保するのかを考へねばならない。 此れに対し、勘助と翁が相談した結果は下の通りとなつた。  一、獣の正体については、勘助を中心とする五名の熟練猟師から成る    調査隊を組織して、其の解明に当たらせる。  ニ、獣の接近に対する警戒については、中堅猟師を中心とする、五名の猟師    から成る集団を合わせて四個作り、交代で山中の見回りに当たらせる。  三、未だ獣が襲撃して来る可能性の高低は判断できて居らぬ上、此れから    田植えの時期がやつて来る事もあり、集落住民の避難、防護柵の建設    等の対策を取る事は、住民の反発を招くと予想され現時点では    難しひ。    但し実際獣が襲撃して来た場合に備へ、猟師以外の者が山中に立ち    入る事を原則として禁止する他、夜間は玄関扉から窓に至るまで    家の全ての開口部を厳重に封鎖し、決して外出はせぬやう各世帯に    通達するなど、最低限の策は執る事とする。    此れに加え、中堅猟師五名より成る集団を組織し集落の夜警に    当たらせる。
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