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此れは未だ日本の国土の大半が未開であつた時分の話である。
今でこそ、此の国には鉄路、道路の類が枝葉に至る迄縦横に張り巡らされて居るやうであるが、其の当時鉄道などと云ふものは無論無い。路は、在ることには在った。而れども、其れは江戸期の街道と寸毫も違わぬものであつて、矢張り不便
である事に変わりは無かつたのであつた。
此れはさう云ふ時分の話である。処は安芸国の山間と聞いた筈だが、
果たしてさうであつただらうか。吾輩には確証が持てぬが、其れは枝葉末節に
過ぎぬものであつて、大した事ではあるまいと思ふ。
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