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さて、今翁は与作の家を通り過ぎ、登山口へと歩いてゐる。傍らには五人の
猟師も共に歩いて居る。未だ日は高ひので、集落の人々が何人か歩ひてゐる
のも見えた。更に遠くの方では子供達が無邪気に遊んでゐるのも見える。
此の景色を見る限り、集落に危機が訪れるかも知れぬ、などとはとても
思へなかつた。
今回の見回りの経路は、集落東端の登山口から山に入り、此処から集落の
外縁をなぞるやうに集落の最西端の方まで進み、其処で反転して最後に
また東側の登山口へと戻つてくる、と云ふものである。山へ下手に分け
入るのではなく、警戒の範囲を集落周辺部に限定した方が獣接近の兆候を
確実に捉えられるだらうと云ふ考へのもと、採用された経路だつた。
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