一、

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猟師の言に依れば、彼は集落から山に入りて一頭の鹿に逢ひ、 其れを仕留められぬまゝ三日三晩延々と追ひ続けて居つたが、 4日目になつて遂に此れを見失ひ、同時に己の還る道をも見失つたのである。 何処に向かつて居るのかも分からぬまゝ闇雲に進んで居つたところ、 陽光も殆ど入らぬやうな深き谷の底で、彼は一個の淵に行き当たつた。 其れが、彼の「長者が淵」だつたのである。
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