神が唸る時

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 力の全てを出し切った俺は、次の町内に神輿を託した瞬間、アスファルトに転がった。 荒い呼吸を整えると、さっきまでの『俺』は、満足したのか、急にいつもの『僕』になった。  荒ぶる神輿と男達が遠ざかって行く。少し感傷的になった。思えば、初めてかもしれない。こんな気持ちになるなんて。  神輿は全ての町内を巡ると、広場に辿り着き、神事が行われる。これは、神様にして来た最後の隠し事だが……。 僕は、いつもこの時に帰宅する。そして、シャワーを浴び、さっさと着替えて屋台を練り歩く。  僕は何事も無かったかの様に立ち上がると、今年から始まった『タピオカ』と書かれた屋台を思い浮かべた。 ──背の高い男と、お婆ちゃんの近くだった。 僕は颯爽と歩き出した。
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