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ぼーとする私の思考をクリアにしたのはJUDGEさんの手を叩く音だった。
「γ、それをするならば俺はお前に力を使わなくてはならなくなる」
いつもより低いJUDGEさんの声がまだ熱のこもった頭の中で響く。
その言葉に男性は、こくりと頷くだけだった。
そういえば私、今何を考えていたんだっけ。
何が起きたのかもわからないのに凄まじい感情に飲み込まれていく感覚だけが残っている。
まるで自分が自分ではなくなっていくような──。
ぞわりとした身体を抱きしめ、私はそれ以上考えないように深く息をついた。
私は気を取り直してといった感じで「ζです。よろしくお願いします」と男性に向かって手を差し出した。
けれど男性は私の手を見るだけで、動こうとも喋ろうともしない。
不思議に思っていると、それを見ていたJUDGEさんがため息をついた。
「γ、自己紹介をしろ。丁重にな」
「俺はCARRIERのγ。よろしく」
そう言ってγさんは私の手を握った。
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