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刹那、空間が横に裂けて、中からお花畑の世界が現れた。あおが躊躇いもなく、そのお花畑の世界へと飛び込んでいったので、マナとプラズマもお互いに目配せをすると世界に飛び込んでいった。
お花畑の世界に足を踏み出すと、あおがいなかった。
「あ、あれ? あの子は?」
マナはきれいな花畑を見回しながら、あおを探した。
「いないな……。これからどうすればいいんだ?」
プラズマが呻いた時、ピンク色の可愛らしい花が密集している花畑の真ん中に、モンペ姿の少女がホログラムの様に現れた。
「あ! あなたは!」
「やあ、もう戻ってきたんだね。」
モンペ姿の少女は、マナがこちらの世界に来たときにはじめて会った女の子であった。
「誰だ?」
プラズマは首を傾げながら、二人の会話を聞いている。
「前にも名乗ったけど、私はK。伍に行きたいんでしょ? そこの未来神さんも。いいよ。責任は取らないけどね。」
Kの少女は軽くほほ笑んだ。
「あ、あの……。」
マナはKの少女の手にすっぽり収まっているジャンガリアンハムスターに目を向けた。
「まさか……。」
「え? ああ、あおちゃんの事? かわいいよねぇ。……あおちゃん、ご苦労様。」
Kの少女は、手のひらに乗っていたハムスターを地面にそっと下した。
ハムスターは花畑の内部へと入り込み、消えてしまった。
「あのハムスターが先程の……。」
「そうか! やつはハムスターになれるから、いつの間にか天記神の図書館の机なんかに座ってやがったんだ!」
プラズマは納得して頷いていた。
先程の鶴と同じ感じなのだろう。あまり気にしない方が良さそうだった。
「んじゃあ、結界に行こうか。」
Kの少女は楽しそうにほほ笑むと、手を横に広げた。いままであった花畑がぐにゃりと曲がり、マナとプラズマは世界が反転するような気分を味わった。
「うげぇ……気持ち悪い。」
プラズマが吐きそうな声を上げた時、あたりは真っ白な空間に変わっていた。
目の前に、こちらの世界に入るときに見た、五芒星(ごぼうせい)の結界があった。
「ここは……。」
「ここは、君がここに来たときに見た所だね。」
「やっぱりそうだ。」
Kの少女は疑問に思った事をなんでも答えてくれた。マナは頷くと、気持ち悪そうにしているプラズマを促して結界のそばまで寄った。
結界の先は真っ暗だ。宇宙空間がどこまでも続いている。
「……なんかここに立つと悪寒がするぞ……。」
プラズマは怯えながら二、三歩後ろにさがった。
「悪寒?」
マナは不思議そうに首を傾げた。
「あんたは何も感じないのか?」
「……感じないよ?」
プラズマとマナの会話を、Kの少女は黙って聞いていた。Kの少女には、黄色に光るマナの瞳と緑色に光るプラズマの瞳がはっきりと目に映っていた。
……マナにはエラーが出っぱなしだ。プラズマは正常。緑色は皆そうだけど……黄色に光る瞳ははじめてみた。彼女はうまくシステムを抜けている……。
Kは軽くほほ笑むと、大きく頷いた。
「……で? もう結界越えられるけど。」
Kの少女がマナとプラズマを交互に見つめた。
「私は行くよ。プラズマさんは?」
マナは怯えているプラズマを仰いだ。
「……お……俺も行くよ……。」
刹那、プラズマの瞳が黄緑色になったのを、Kは見逃さなかった。
「じゃあ、行こう?」
「お、おう! せーのっ!」
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