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ただ単純に芝生しかない公園だ。フリスビーやボールなどを使って遊ぶ子供達が休日には多くなる。現在は誰もいない。平日の真っ昼間なのか。
太陽が眩しく芝生を照らし、夏に近いのかだいぶん暑い。
「……夢……? だったのかな? でもこんなとこで昼寝した覚えはないし……。」
マナは不安げな顔で辺りをもう一度見回す。すると、自分の真後ろで大の字になって寝ている、赤髪の男を発見した。
「……あの人は……確か……えっと……そうだ! プラズマさんだ!」
マナはプラズマを一瞬忘れそうになっていた。先程まで一緒にいたはずの彼を、こんなにも早く忘れてしまうとは一体何なのか。
マナは慌てて駆け寄り、プラズマを揺すってみた。
「プラズマさん! プラズマさん!」
「ん……?」
プラズマはマナに揺すられて、やっと意識を取り戻した。
「プラズマさん!」
「おっ⁉ マナか? ……ここは……。体に鉛がついたみたいに重い……それに苦しい。」
プラズマは頭を抱えて起き上がったが、バランスを崩し、その場に膝をついた。
プラズマはどこか苦しそうだった。
「大丈夫? プラズマさん。ここは私が本来いた世界みたい。」
マナには体の不調はまるでなかった。
「じゃあ、ここが伍(ご)か……。しかしここは、歩くやり方まで忘れちまったみたいに、動き方を思い出せない世界だな……。やはりデータが違うから、体中おかしくなってんのかな。」
「歩き方を思い出せないって……。」
プラズマの言葉にマナは目を丸くした。向こうの世界とこちらの世界がそんなに違うとは思えなかった。
「ま、いいや。で、俺これからどうしよう?」
勢いでついてきてしまったプラズマは、あまりにしんどい世界に頭を抱えた。
「……あの……実はちょっと行きたい場所があって……。」
マナは控えめにプラズマを仰いだ。プラズマは額の汗を拭いながらマナを見据えた。
「ん? 行きたい場所か?」
「うん。向こうの世界みたいに沢山いろんなことは起きないけど、こっちにも神社が三つだけあるのよ。スサノオ尊、月読神、アマテラス大神……この三柱がいらっしゃる神社……こちらでは参拝客はいないけど、歴史的な文化遺産として建物が評価されていて、今でも壊されてないの。」
「……こっちの人間は本当に何も信じてないんだな。ま、神がこちらにはいないんだから、神社を壊しても何のあれもないか。」
プラズマの呆れた声にマナは小さく頷いた。
「それで……その三つの神社に行ってみたいんだけど……一緒に行くかな?」
「……ああ。特にやることもないし、あんたといないと俺、この世界から消えてなくなりそうだからな。ついていくよ。」
マナはプラズマに肩を貸してあげた。彼は本当に歩き方から忘れてしまったようだった。
向こうにいる他の神様がこちらに来たら、こんな症状では済まないかもしれない。
こちらに来る前に消滅するか、運よく来られても全く動けず、話せずの状態になっているか……もしくは植物状態になっているかもしれない……。
「俺は本当にすべてを忘れた……。動き方を思い出せない……。それともこちらでは、動き方のデータが違うのか? 俺がこちらにも半分通じている未来神で良かった……。こんなんで済んだとは。」
プラズマは、良く思えば運が良かったのだと思い直し、マナに肩を預けながらしみじみ思った。
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