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「さぁ、トゥアンよ。私を斬るがいい。私の最後の役目は、大地の神クルト様の前に竜巫女として、聖戦士としての最期を捧げるだけだ。先に逝った神竜チェトリとともに、我ら大地の民はクルト様の下へと還るのだ」
「この後に及んでまだ言うのか。最後ぐらい、自分達が魔神の民である事を認めたらどうだ」
「愚か者め。正義とは勝ち負けで決まるものではない。貴様らゾーイのまやかしに惑わされた偽りの民にはわからんだろうがな」
トゥアンのこめかみがピクリと動いた。英雄ゾーイを侮辱され続けるのは我慢の限界だった。
「さぁ、斬れ。私を斬りさえすれば、お前達が望んだものは全て手に入る。我ら大地の民から全てを奪い尽くすのだ。お前達偽りの民は晴れて偽りの英雄ゾーイの宿願を果たす事ができる。何を迷う事がある。偽りの英雄ゾーイを受け継ぐトゥアンよ、私を斬るのだ!」
「黙れ! 俺達は魔神の戯言に付き合うつもりはない。太陽神セラヴィの下に己の非を認め、過ちを悔いよ!」
「太陽神セラヴィだと、馬鹿馬鹿しい」
ハルワイは嘲笑した。
「そんな神がどこにいる? そいつは一体どこから来た? 全ては偽りの英雄ゾーイが作り出した妄言! 太陽の神とやらが実在するというのであれば、その刃でもって証明するが良い。それこそが血を流す事でしか己の正義を誇れぬ哀れな偽りの民に相応しい! 大地の神に背き、刃を向ける愚かな偽者どもよ! 血と嘘に塗り固められた偽りの栄光を未来永劫語り継いでいくが良い!」
「自ら滅びの道を選ぶというのか!」
「大地の民は滅びぬ! 大地の民は、共生の民だ。神に与えられた大地とともに生きる。大地が潤えば我々も栄え、大地が朽ちれば我々も果てる。大地とは土であり、木や草であり、水であり、風であり、そこで生きる全ての命だ。例えこの命が果てようとも、我らはフィグネリアの大地とともに生き続ける。貴様らのような風に吹かれてやってきた根無し草とは違うのだ!」
「根無し草だと。侮辱するのもいい加減にしろ! その口を慎め! 魔神に仕え、民を破滅へ導いた自分自身を悔い改めようとは思わんのか!」
「私を斬るのが怖いかトゥアン。この戦いを終わらせるのが怖いかトゥアン。それはお前が偽りだからだ。偽りでないというのならば、私を殺してお前の手でこの戦いを終わらせるのだ! さぁ、トゥアン! 貴様は自らが偽りである事を認めるというのか!」
「くっ……!」
両手を大きく広げたハルワイの胸に、たまらずトゥアンは自らの刃を突き立てた。肉と骨を破る鈍い感覚が手のひらを伝い、鮮血が飛沫のようにトゥアンの顔を襲う。
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