武器じゃないの不器なの

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 茜色の空の下の遊歩道を私達は並んで歩いていた。  憧れだった恋人繋ぎを私は今しているんだ。  明るいうちはあんなに一杯お話しできたのに、話す言葉もなんだか少なくなって、少し涼しくなってきたからなのか、あなたの気配をとっても強く感じるの。  歩くだけで、繋がっているだけであなたと誰よりも親密になっている気がして、朝のドキドキとは違うもっと別の、穏やかで静かな、膨れ上がる熱の塊の様な、胸に収まらない何かが心臓に灯っているみたい。  ゆったりした何もいらない幸せな時間が続いて、だからもう日が沈んでいた事なんか気づかなくて、あなたが立ち止まってようやく気が付いたの。  あなたはそろそろ帰らなくちゃねと言って、私に向いたわ。 「泣いているの? 」  ああ、そう言われてほっぺが冷たい事に気が付いたわ。 「ああ、寂しいなって思ったのかしら」  あなたは私をぎゅっと抱いたから私はとても驚いたけれど、恐る恐る腕を回したの。 「また明日ね」  あなたの言葉が優しい。
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