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「じゃあ、先に車行ってろよ。俺もすぐに行くから」悠平が遥香にキーを渡した。
「わかった。先に行ってるね」
遥香が娘をつれて歩いていく。彩美は母親に寄りかかりながら歩いていたが、途中で抱きかかえた。その後ろ姿を眺めていると悠平が、
「あの時、本当に財布落としたのか?」
「さあ、どうだろうね」
「まあ、どっちでもいいけどさ」
「だろ。どっちでもいいんだよ」
「そういえばさっき、なにか探してる様子の高校生っぽい男女がいたけど、お前のとこの生徒じゃないのか?」
「俺のところの生徒だよ。そんでうまくいけば将来的にはお前らみたいになる」
「どういうことだ?」
「別に。ただ、友達が告白するのを応援したいってやつに俺の昔話をしただけだよ」
塚田はレモン色の満月を見上げた。
了
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