塚田(4)終章

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「彩美ちゃんだよな。だいぶ大きくなったな」 「うん。五歳になった」 「やっぱり覚えてないよな。会ったの赤ちゃんのときだから」 「だね。もとから人見知りってのもあるけど」 「まあ、仕方ないよ」 「孝介くんは見回り? 大変だね学校の先生も」 「仕事だからな。でも、ほとんど生徒は帰ったみたいだから、そろそろ終わりだよ」 「でも、お前が教師になるなんてな」悠平が言った。 「確かに。俺が一番驚いている」 「人生なにがあるかわかんないな」 「確かに。あの時も俺が財布落としていなかったら、お前は告白出来ずじまいで遥香ちゃんと結婚していないもんな」 「だな。それは言えてる」 「びっくりしたよ。財布探していたら突然、付き合ってくださいって言われたから」  遥香の言葉に悠平が、 「顔を見たら言えそうになかったからな」  遥香の頬が緩んだ。花火の欠片みたいな星屑が広がる夜空から落ちてくる、やわらかい月明かりが、母親の袖を引っ張る眠たそうな彩美の顔を照らしている。 「どうしたの? 眠たいの?」  彩美が無言で頷く。 「そっか。じゃあ家、帰ろうか」
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