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悠平(1)
「何時集合だっけ?」となりを歩く孝介が訊ねてきた。
「十九時だよ。遅れんなよ。頼むぞ」
「任せろ。俺は時間だけは守る男なんだ」
「本当かよ」
「それより、遥香ちゃん、浴衣着てくるかな?」
「どっちでもいいよ、別に」
「でも、どちらかと言えば?」
「そりゃ着てきてほしいよ」
「なんだよ、この野郎。最初から正直に言えよ」
孝介が抱きついてきた。「やめろよ」と振り払おうとしてもなかなか離れようとしない。「祭りだ、祭りだ」とはしゃいでいる。
額から流れた汗が目に入り思わず目を閉じた。
「遥香ちゃん今日、自習しに学校行くって言ってたから、浴衣着て来てって頼んどけよ」
「いいよ、別にそんなの」僕は目を閉じたまま言った。
「だったらなんのために俺たちはこのくそ暑いなか自習しに行くんだよ」
「勉強するためだよ」
「なら遥香ちゃん自習しに学校行くって言わなかったら行ってたか?」
「行ってないな」
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