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「教師の言うセリフじゃないですよ」朝山が笑う。
「せめてパーにしてあげてください」越田が右手をパーにして言った。
「そこはあえてのチョキでしょ」村川が指を二本、前に突き出して越田の方を向くと、
「私の勝ちー」
「いや、これは違うだろ」
「だったら、ちゃんとじゃんけんしよ、じゃんけんホイ」
村川が勝った。「イエーイ、祭りのときなんか奢ってもらおっと」
「あんまり高いのは無理だよ」
「えっ、本当に奢ってくれるの?」
「まあ、いいよ。別に」
「やったあ、ありがとう。じゃあ、先生もじゃんけんしよ。私が買ったらなんか奢ってね」
「お前、マジか。マジて言っているのか?」
「いいじゃん、とりあえずやろ。ほら、じゃんけんホイ」
塚田が勝った。村川はつまらなさそうな顔をして、
「空気読んでよ、先生」
「知るかよ。とにかく調子に乗って遅くまでいるなよ」
「はーい。ねえ、先生は今日のお祭り行くんですか?」
「行くよ。見回りにな」
「大変ですね」
「気遣ってくれるなら、問題を起こさないでくれよ」
「起こしませんよ。私、品行方正なんですから」
「だったら遅刻を減らす努力をしてくれよ」
「そうだよ。十九時の待ち合わせ遅れるなよ」
朝山の言葉に「うるさいよ」と返す村川を越田が見つめている。
「お前ら、何時まで自習するんだ?」
「もうそろそろ帰りますよ。そこから帰って準備して祭りに行きます」朝山が答えた。
「何度も言うけど、あんまり遅くなりすぎるなよ」
「はーい」三人が声をそろえて返事をした。
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