塚田(1)

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「教師の言うセリフじゃないですよ」朝山が笑う。 「せめてパーにしてあげてください」越田が右手をパーにして言った。 「そこはあえてのチョキでしょ」村川が指を二本、前に突き出して越田の方を向くと、 「私の勝ちー」 「いや、これは違うだろ」 「だったら、ちゃんとじゃんけんしよ、じゃんけんホイ」  村川が勝った。「イエーイ、祭りのときなんか奢ってもらおっと」 「あんまり高いのは無理だよ」 「えっ、本当に奢ってくれるの?」 「まあ、いいよ。別に」 「やったあ、ありがとう。じゃあ、先生もじゃんけんしよ。私が買ったらなんか奢ってね」 「お前、マジか。マジて言っているのか?」 「いいじゃん、とりあえずやろ。ほら、じゃんけんホイ」  塚田が勝った。村川はつまらなさそうな顔をして、 「空気読んでよ、先生」 「知るかよ。とにかく調子に乗って遅くまでいるなよ」 「はーい。ねえ、先生は今日のお祭り行くんですか?」 「行くよ。見回りにな」 「大変ですね」 「気遣ってくれるなら、問題を起こさないでくれよ」 「起こしませんよ。私、品行方正なんですから」 「だったら遅刻を減らす努力をしてくれよ」 「そうだよ。十九時の待ち合わせ遅れるなよ」  朝山の言葉に「うるさいよ」と返す村川を越田が見つめている。 「お前ら、何時まで自習するんだ?」 「もうそろそろ帰りますよ。そこから帰って準備して祭りに行きます」朝山が答えた。 「何度も言うけど、あんまり遅くなりすぎるなよ」 「はーい」三人が声をそろえて返事をした。
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