217人が本棚に入れています
本棚に追加
/648ページ
『薫風よ、舞え。彼の者を包み癒せ』
『行き交う風と共に舞え。我が源を糧に彼の者に宿る悪しき氣を取り除かん』
爽やかな香り漂う風にライトが包まれ、合わせて薄い霧が部屋全体を包み込んでいく。すると、ライトの呼吸が段々と楽になったのか落ち着いていき、やがて目を開いた。
「こ……ここは?」
「ライト、気がついたのね!」
「え、主?」
掠れているが、しっかりとした声でライトは上体を起こした。
そして、奈央美の顔を見るなりくしゃりと泣きそうな笑顔となって、思いっきり奈央美の懐に抱きついてきた。
「主ーー!」
奈央美はしっかりと受け止めて、出来るだけ苦しくない力でライトを抱きしめた。
「ライト、もう体は平気?」
「はい! 御心配をお掛けしました!」
「良かった……本当に良かった」
まさかこんな一瞬でずっと苦しんでた自分の相方が元気になるなんて想像してもいなかった。涙が流れるのが我慢できなかったが、それはライトも同じで服に湿った感触を得た。
「ありがとう、ございました」
それと、喜びに浸っていてはいけないと晁斗達に礼を告げた。
最初のコメントを投稿しよう!