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隠し事
描く仕事を生業としているワシには、隠し事がある。
人はそれぞれ各死毎に記憶を失い、新たな人格を得て生まれてくる。
しかしワシは各死毎に記憶を失うことがない
各私毎に人格こそ多少の変化は起こすのだが、今の私はただひたすらに絵を描く、仕事だから
ピンポーン
おっと、届け物の様だ。
角に装飾が施された玄関を開けると配達員
しかし、こんな時間に届くとは。
ごはん食べ終わったばっかなのに。
「とっきゅう便でーす」
てことはあれか、串ごと食べれる串カツセット。もう少し早く届いていれば、おかずとして食べたのに。ワシはついておらんのお。もう食事はおわった。ご飯が無いのだ。
もうちょこっとゆっくり食べるべきだったな
「ハンコお願いします」
私のハンコは特殊な形をしている、それは四角
私事だから興味なさそうだな。結構、「変わってますね」とか言われるんだけど。
まあいい、ものは受け取ったし部屋に戻ろう
「あなた、何だった?」
妻はやはり尋ねてくるか、串ごと食べられる串カツは妻には内緒の買い物。隠し事なのだ。
なので決してバレてはいけない。妻との約束を破っているのだから。
妻との約束は以下の通り
◇仕事に口出しをしない。
◇死後、共に墓に入る。
◇死語とギャル語は使わない。
隠し事はしない。
以上!
ワシは約束を破ってしまった訳だ。
ワシを待っているのは過苦死、後藤氏と六角氏に殺されても文句は言えない。
後藤氏と六角氏は妻の友人でヤクザ。
怖い恐い。
今からでも正直に打ち明けようか?
私の口から。
ああ死にたく無い。
各死毎に記憶が消えないのだから
死はもう味わいたく無い。
殊更に恐怖が膨れ上がっていく
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