隠し事

1/2
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/3ページ

隠し事

 描く仕事を生業としているワシには、隠し事がある。  人はそれぞれ各死毎に記憶を失い、新たな人格を得て生まれてくる。  しかしワシは各死毎に記憶を失うことがない 各私毎に人格こそ多少の変化は起こすのだが、今の私はただひたすらに絵を描く、仕事だから  ピンポーン  おっと、届け物の様だ。  角に装飾が施された玄関を開けると配達員  しかし、こんな時間に届くとは。  ごはん食べ終わったばっかなのに。 「とっきゅう便でーす」  てことはあれか、串ごと食べれる串カツセット。もう少し早く届いていれば、おかずとして食べたのに。ワシはついておらんのお。もう食事はおわった。ご飯が無いのだ。  もうちょこっとゆっくり食べるべきだったな 「ハンコお願いします」  私のハンコは特殊な形をしている、それは四角  私事だから興味なさそうだな。結構、「変わってますね」とか言われるんだけど。  まあいい、ものは受け取ったし部屋に戻ろう 「あなた、何だった?」  妻はやはり尋ねてくるか、串ごと食べられる串カツは妻には内緒の買い物。隠し事なのだ。 なので決してバレてはいけない。妻との約束を破っているのだから。  妻との約束は以下の通り ◇仕事に口出しをしない。 ◇死後、共に墓に入る。 ◇死語とギャル語は使わない。  隠し事はしない。  以上!  ワシは約束を破ってしまった訳だ。    ワシを待っているのは過苦死、後藤氏と六角氏に殺されても文句は言えない。  後藤氏と六角氏は妻の友人でヤクザ。  怖い恐い。  今からでも正直に打ち明けようか?  私の口から。    ああ死にたく無い。    各死毎に記憶が消えないのだから  死はもう味わいたく無い。  殊更に恐怖が膨れ上がっていく        
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!