健気なマネキン

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健気なマネキン

大手ショッピングモールに警備員として勤めている松山健二。 松山は、他に仕事を掛け持ちしている事から夜間警備をメインに担当している。 今日も彼は、ショッピングモールの夜間警備をして回っている。 開店中のモールは人で賑わう明るい雰囲気だが、閉店後の照明が落とされたモールは不気味で暗い雰囲気にうって変わる。 松山自身は、心霊や都市伝説など科学的に根拠のないものは信じず怖いと思っていない。 だが、最近の彼は悩みを抱えていた。 それは、夜間警備中にマネキンが様々な手を使ってアプローチをしてくる事だ。 マネキンは、2F婦人服コーナーにあったであろう白く顔無しの一般的なマネキンである。 初対面の時は、背後から肩を叩かれて顔を覗き込むように見てくる婦人服を着た姿だった。 松山は、驚きのあまり意識を失い病院に搬送された。 後日、退院して仕事に復帰した松山は、普段通りに夜間警備をした。 勿論、彼はマネキンの事を忘れた訳ではない。 そして、マネキンも彼を忘れていなかった。 その日も松山は、モール内を散策をしていると柱の影から白い脚が見えた。 「あっ………。」 松山は思わず声が出てしまった。 声に気がついたのか、白い脚が動き出しマネキン本体が柱から現れた。 しかし、以前会ったマネキンの姿ではなかった。 そこには、セクシーランジェリーを身につけた色んな意味で危ない姿であった。 マネキンは、恥じらいがあるのか体をモジモジさせながら近寄ってくる。 (えっ?どいう意味なんだ…?) マネキンは、顔合わせずメモ用紙を差し出してきた。 松山は恐る恐る受け取り、内容を確認した。 [この前は驚かせてごめんなさい。] 他にも、子どもには絶対見せられないような過激な言葉が並んだマネキンからの謝罪文が綴られていた。 改めてマネキンの方へ向き直ると、顔を俯かせてモジモジしていた。 松山はマネキンに向けて一言。 「…お気持ちだけ受け取っておきます。」
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