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体が空いたのは深夜3時をまわっていた。さっきのダンディズム臭がする客が帰ったのが9時すぎ。さすがに時間が空きすぎたし、もう出ないだろなとたかをくくって名刺裏に記された番号へかけてみる。並んだ数字がやたらと企画張っていて綺麗だ。
もしもし、と寝てたとは思えないはっきりとした声が電話に出た。
「え、なんで?」
「ん?春馬君だろ?お疲れ様、仕事終わったのかい?」
「え、あぁ、はい」
「クスッ、どうした?君が構わないなら店まで迎えにくるが」
「や、いや、ありがとうございます」
起きていた事にも驚きだが、この人の丁寧な物腰が僕の警戒心を妙に駆り立てる。
じゃあ15分後、店の裏口でと電話は切れた。
モノとして扱われると安心する。これは何も知らないのだと、僕という個体など見ておらずただの買い手と売り手、そこには利害関係のみが存在するシンプルな関係。
僕は何も欲しくない。
店の上にある自室に上がりシャワーをざっと浴びると着の身着のまま裏口へ降りた。
「急がせたようだね、すまない。さ、乗って」
運転席から身を乗り出しわざわざ助手席のドアを開ける。これが礼儀だと言わんばかりにごく普通に当たり前に。あぁ、やはり居心地が悪い。
無言で乗り込むと静かに車は発進した。
「手短に済ませたいのですが、ご要望は?シチュエーションとか着る物とか。プレイならだいたい何でもやれます」
「あはは、そうだねじゃあまずは飯でもどうだい?腹が減っているだろう」
チラリと僕の表情を確認する視線が酷く面倒だと感じた。
「えぇ」
だから何も言わずに彼の股間に潜りこみ、口でファスナーを下ろすと柔らかく弾力のあるペニスを探し出し口に含んだ。一緒に食らった陰毛がジャリリと脳に直接響く。柔軟剤の匂いか、ボディーソープの匂いか、彼のペニスは生温かさとオスの匂い、そして僅かにいい匂いが混じっている。
「ちょ、春馬君、やめなさい春馬君」
慌てた様子が本気のものだとすぐに気が付いたが、彼の事情など僕には関係ない。
直ぐに勃起し始めたペニスは、もう脳ミソに陰毛の音は伝えてこない。代わりにジュポジュポと卑猥な音が車内を満たしていく。
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