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車が走り去り、テールランプが見えなくなるとようやく僕のプレーは終了。
さて、帰るか。
荒いアスファルトがヒザからポロポロと剥げ落ちる。いざ立ち上がろうと右足に体重を乗せるとそのまますっ転んだ。
立った瞬間転ぶと分かるのに防げない、体を支えることができないらしい。よもや足の役割を放棄したのか。じゃあこれは飾りか?そんなものはいらない、使えない足ならねじ切ってしまおうか。
不毛だ。
自分の足を脅したとこで何の解決策にもつながらない。
右膝下あたりの脛骨が非常に痛いらしい。困った、立てない。
仕方がないので道の脇まで尻でずって行き、しばらく待ってみることにした。そのうち痛みはひくだろうし。
そのまま仰向けになり天を仰ぐ。秋の夜空は空気が軽く垂直に夜空への道がひらけている。
物凄い星空。
遠くで車が行き交う音、何の虫かも知れない声。グエぇっと寝ぼけたサギが鳴いた。
土の香り、下に溜まった夜の匂い、時折吹き抜ける風が全部をいっしょくたにひっかきまわして去っていく。
周りの音も漏れることなく伝わってくるのに何も感じない僕の脳みそ。
そこいらじゅうに散らかった体の痛みだけが、今ここに僕が生きている証としてあるだけ。
世界が僕を切り離したのか。僕が世界から切り離れたのか。こんなにも夜空は開けているのに、僕はいつまでも混じりあえそうにない。
欲しくない。
目を閉じて眠りたい欲求に唐突に駆られ、僕は抵抗することなくまぶたを閉じた。
「おい、あんた大丈夫か!?おい、聞こえるか?!おい」
お前の声を聞いたのはこれが初めて。
「まじかよ、おい、おいっ!」
僕は瞼を開けるのが億劫で、声を出すなんて途方もなく面倒で。
「救急車か?救急車だよな、え、おい、しっかりしろ、おい!おいっ!」
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