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気遣わしげな目が僕を見る。
通りすがっただけ。何故そんなにも他人にかまう。放っておけばいい、すれ違えば二度と会うこともないだろうに。
心配そうな目が僕を見る。でも何だろう、世間が僕を見る目では決してない。目の奥に強い何かがある。
大丈夫か、俺を頼ってくれりゃ力になる、なれる。そう言ってるように見える。
あぁ、これは見たことがある。
人を手助けする事に大義名分を掲げた若い警察官の目に似ているんだ。自分には守る力があると疑わない、道を踏み外した人の道しるべになる、光になる、正しい道へ導いてやる。
正義、理由、道理。
――地獄を知らない人間の目。
この人は太陽属性でヒーロー気質。
とことん僕とは相いれない。
「警察?僕がレイプされて道に捨てられていたと?」
「……」
だからね、酷く腹が立った。彼の目がどこまでも真っすぐに、無条件に僕を見るから。だからね、イラついてきたんだ僕。
「冗談じゃない、違いますよ。僕は娼夫なんです。昨夜は客の要望に応えてプレーした結果そのまま道端で眠ってしまっただけです。ご理解いただけました?なんならお相手しましょうか?料金はいただきますが」
ほら、僕の目が真っ向から君を見れば、たまらずうつむくんだ。値踏みされる事に慣れていないだろ?僕が君はいったいどこまで出来るのか見てあげようか。
「くくっ、いや、笑ってすまん。違うんすよ、あんま直球すぎてびびった。へぇそうなんすか、そーかそーか、よかった」
「は?なにが」
「へ?あ、また怒らせた?ごめんて。ちがくてさ、ほらてっきり事件かと思うっしょ。血出して道端に転がってんすよ?死んでんのかと思うっしょ?で、生きてたしなんかされた訳でもねぇなら、あー、よかったなってさ」
ハンドルに方頬をつけ、両手はダラリと脱力、潰れた頬が唇を押し付けているせいでタコ口になっている。その口で何度も‘’よかった‘’を連呼しやがってて。
「あんたさ、何かむかつく」
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