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ムカつく?苛つく?僕が?彼に? 何故。 「おぅおぅ、ムカつけムカつけ。あ、それ、あれな、腹減ってんのな」 思いがけず問の答えが返ってきた。 「腹が減ったらムカつくんですか?何故」 「なぜ?そりゃぁ腹が減ってるからっしょ、がははっ」 ……なにそのメビウスの輪的な。 豪快に笑いながら彼は車を発進させた。それにしても乗り心地の悪い車だ。パニックビンテージ映画に出てきそうな角ばったジープ。ボンネット脇にみえる煙突じみた部分からは黒煙。加えて車内はなにやら生臭い。これは何の匂いだ。何なんだ。 酔いそうだ。 酔った。 「大丈夫かぁ?まだ出るかぁ?あーつーか、何も出てねぇか。あははっ」 「どうも」 差し出されたタオル、はいはいはいと便所から洗面所へ案内され顔を洗ったらスッキリした。 何スッキリしてんの僕。 「テレビでもみてろよ、何か作ってやっから」 押し付ける様に渡されたスエットにTシャツ。 「どうも」 言われるがままローテーブルの上に並んだリモコンを手に取る。 朝のお天気ニュース、差し込む日差し。雑多なノイズが溢れる窓の外。カチャカチャと食器を運ぶ音。 ‘’春、冬、遅れるわよ、はやく食べなさい。もぉ、お父さん新聞畳んで下さい。食事中広げないでっていつも言ってるでしょ?‘’ 母親の声が聞こえる。 ‘’おぉ、悪い‘’ 父は毎朝そう言ったきりコーヒーを片手に新聞を読みふける。 特別なことなど何もない朝。決まって弟が先に食事を済ませ家を出る。僕は――――僕は。
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