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「ほら、でけたぞー食え」
全国のお天気ニュースは、地元のローカルニュースに、変わっていた。
「いただきます」
魚、魚、魚。目の前に魚が数匹並んでいる。見た目は違うがおそらくすべて魚。何この人ベジタリアン的なフィシタリアンなの。
「とりあえず食え。好きだろ、魚。まぁ食ってからだ話は」
なにその決めつけ感。つーか、話とか全然ないし。
どこかこの男のペースに呑まれているようでいただけない。
いや、飯はいただくが。
どこから手を付ければいいか悩む僕の皿に、ノーマルな焼き魚がドカンと置かれた。
皮がパリパリに焼けていて美味そうであることは確かだ。
だが。
「骨がめんどくせぇ」
「はぁぁ?」
心からのはぁ?の後、彼はスイスイと魚の骨だけを的確に排除していく。
凄い。いや、凄まじい。
まるで魚のどこに骨があるのか全て完璧に把握しているかのように、あっという間に魚は骨抜きになった。
「ほら、食え」
彼は納豆をかきまぜつつ、さらに白飯まで僕の前に差し出した。
誰がこんなに食うんだよ。内心げんなりしたが魚に罪はない。ありがたくいただこうと口に運ぶ。
「っ痛」
傷口に塩を擦込まれた痛みとはまさにこれだ。塩が、塩が、塩が、塩がこんなにも人体にダメージを与えるものだと知り驚愕。
「はぁぁ?なに、どれ、見してみろ」
悶絶する僕の手を口元から引っぺがし、彼は拾い食いした犬の口を開けさせるように親指を犬歯に当てすんなりと僕の口をこじあけた。
「これっ!……はぁ……おまえさぁ」
がっくりと言った様子でうなだれたと思えば、盛大なため息一つ。かと思えば突然立ち上がった。
まったく、何なんだこの男は。僕は今物凄く口の中が痛いんだ、うるさくするな。
「来い、ついてこい。ほら早くしろ」
僕に背を向けて立ち去るのかと思ったのに、ついてこいだと?誰が行くものか。
「またお姫様抱っこご所望か?どんだけ世話が焼けるやつだお前は」
さも仕方なくと言った様子で僕を捕まえようと両手が伸びてくる。腹立つ、やっぱ何かこの人腹たつ。
なので、逃げるのは癪。だから噛みついた。
「っ痛ぇぇ!だぁぁぁぁっもぉマジにこんちくしょうだなお前は。こら、じっとしろ、暴れんな、痛っ、眠らせるぞこんにゃろが」
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