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クソ野郎、ふざけんなし。たまには僕の言う事も聞けっ!そう言い捨てて通話を一方的に終わらせてしまう寸での場面。
会いたい気持ちと恋しい気持ち、なにより君を好きだって気持ちがまるっとそっくり“クソ野郎”の一言に変換されて口をついて出そうだった。
もう一拍、君の言葉が遅かったら。もう数秒無言の時間があったなら。
僕は盛大に悪態をつけたのに。いや、好んで喧嘩したいわけでは断じてない。けれど胸と下半身にたまりまくった鬱憤を晴らす手段としてうガーッと吠えるのは有効だ。唸り返してくれれば尚良し。噛みつき合えれば完璧、言う事無し。
だが、君は僕に文句の一つも垂れさせてくれない。
僕の中の怒り君は彼の言葉を聞き、すごすご尾を垂れ、耳を伏せた。
噛み付くぞと凄んでみせた立派な牙はどうした僕。
「っち」
イライラに引っ張られ起き上がった上体が、プツリと糸を切られどさりとソファーへ沈んだ。
そしてまた、僕は飛び出た足先をぼんやり眺める。
「あーあー、酒でも飲みながらお前とダラダラ話たかったなー。ダラダラ話ながらエロい事もしたかったなー。あーあー」
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