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✖✖✖✖✖✖✖✖✖✖✖✖✖✖✖✖✖✖✖✖✖✖✖✖✖✖✖✖✖✖✖✖✖✖✖✖✖✖✖✖✖✖✖✖✖✖ 「どうぞ」 凍ったグラスの霜を壊さないよう素早く、繊細に、注意深く。縁で揺らめくきめ細かい泡が濃厚で柔らかい味わいを口に含む前から脳が楽しむ。 「ありがとう」 見知った店、僕が働いているバーで、僕の半分の時間がここで生きている。 テーブル席にグラスビールを運ぶ。 顔を認識できない誰かの隣りに座っているのが、あの日の獣医だと分かり少し驚いた。ありがとうと言った声が後から獣医の声に塗り替わる。 彼だと分かった途端僕は彼が欲しくなる。何故かなんて分からない。ただ電車で隣り合っただけ、ただ通りすがりに挨拶しただけの相手に強烈に惹かれる事があるように。 僕はただ彼に抱かれたい、今すぐ、ここで。 彼は隣の男と話をしている。僕には聞こえない。ビアグラスは直ぐに空になる。彼は空いたグラスを少し掲げておかわりの合図。 流れるBGMがとぎれとぎれに耳に入って来る。照明は僕の手元と彼の周囲だけを照らしていて。 僕は再度テーブル席へビールを運ぶ。その時には僕の股間はパンパンに勃起していて。テーブル下で彼の手を強引に股間へ導く。 驚いた表情を向ける彼。僕も驚いてる、けれど止められそうにないんだ。 「来いよ」 掴んだ手は振り払われる事なく、僕の股間に申し訳程度に触れたまま。 足も舌も痛くない。痛くないと認識した途端痛みを思い出す。縫われた舌をベロリと出し彼の口内に押し込んだ。舌先が縫い止められた糸を触る。彼のあごに生えたヒゲが角度が変わる度に僕の口元をこすっていく。 「探してたんだろ僕を。僕は会いたかったよ」
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