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「あぁ、これはやべぇエロいな。チンポ同士も愛し合ってるみてぇじゃん」
2人で覗きこむように股間に視線を下ろした。
先端から染み出た透明の体液が、僕の先端と彼の先端を繋げている。お互いの体液を混ぜあいトロリと糸を引いている。まるで濃厚なキスの後のようだ。
指先ですくい取り彼の頬にぬりつける。そこだけヌラついて照明を反射する。
「そうだね、僕達みたいに勝手に愛し合ってる」
愛し合ってる。
ピクンと僕の中の何かが反応した。
愛し合っている。
愛し合っている?
いや、愛しあっていない。
僕のすぐ真横からパンッと手を叩く乾いた音。催眠を誘導されるように僕の思考は閉ざされる。
「はやくヤりなよ」
彼の隣に座っていた能面が口を開く。待っていたとばかりにその存在に照明があたる。
「はやくヤりなよ。どうした?セックス得意だろ?ほら、はやくヤりなよ」
僕を覗きこみ、気色悪い黒い三日月の口元がニヤリと笑った。
彼には聞こえないようだ。能面には何の反応もみせず彼はペニスをグリグリとあてがっている。
先っぽの感触にゾクリと震える。
途端にじわじわと腹のそこから怒りが湧いてきて、グルグルと僕の中を侵していく。止まらない、止められない、僕が呑まれるまでにさほど時間はかからなかった。
荒くなった息遣い、僕の中にずっぽりペニスを沈めた彼は深く深く息を吐いた。
僕は突然二人になる。セックスしている自分とそれを部屋の隅で見ている自分。
どちらも怒っている。抱かれながら煮えくり返る怒りに呑まれる僕。それを見ながら歯ぎしりする僕。
アイシテルと言いながら僕を抱え、夢中で腰を打ち付けていた獣医だったそれは、気色悪い能面に変わっていた。
瞳の無い黒い闇と目があった。ヒッと引きつった悲鳴じみた声が喉からでて。
僕はそれが酷く惨めで。なさけなくて、悔しくて。
「豚みたいな声で鳴くんだな、ほら豚らしく四つん這いになれ、豚が、ほら豚!」
体位を変えようと能面が僕の中からペニスを引き抜きぬいた。
瞬間、僕は回したままの腕に力を込めた。
ぐいっと引き寄せられる能面の顔。酷いにおいに吐き気を覚える。
僕はそれの喉笛に喰らいついた。
ゴリッガリッと鈍ついた音がして、僕の歯が骨に当たって止まった。ドクンドクンと唇が大きな脈を感じる。更に力を込める、何が起きようと絶対に食らいついてやる。絶対に放さない。
能面はヒューヒューと漏れるような息をしながら激しく僕を突き上げる。何度も何度も何度も突き上げる。
僕は鼻で必死に呼吸し、喰らいついたままの口元からはダラダラと血と涎が混じった液体が滴っていく。
ポタポタ
ボタボタと。
部屋の隅で見てる僕は、割れたビアグラスを手に取り能面の背中を切り裂いた。
血飛沫が美しく床を彩る。
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