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やがて能面の鼓動は止まる。喰らいついた喉笛からは呼吸音は消え、皮膚を盛り上げるほど大きく脈打っていた頸動脈はピクリとも振動を伝えてこない。
能面は死んだ。
けれど死体は僕を突き上げ続ける。果てても果てても僕の中から出ていこうとしない。
内ももが白濁にまみれ、能面の異臭が部屋を満たし、付かれるたびに溢れてくる精子が僕の血で真っ赤になっても。能面は僕を離さない。
僕も放さない。終わらないセックスがいつまで続こうと喰らいついた喉笛は決して放さない。苦しくても、顎の感覚がなくなっても、噛み切る事ができなくても、首の筋がいかれてしまっても、確実に死をもたらすまで僕は放さない。
そうしなければならなかった。
そうしなければこの死体は簡単に息を吹き返す。僕には確信があった。首から離れた瞬間、この死体は大きく息を吸い込み蘇る。
脅迫観念にも似た、ねじ切れるまで搾り取られるような、それでもやらなければというとり憑かれた意識が僕を支配していた。
喉に食いついた僕をぶら下げたまま、いきり立ったペニスを出し入れする怪物地味た男。
突き上げられる度に体だけがポンポンと跳ねあがる青白い僕。
真っ赤にぬるつく両手をぼんやり見ながら、部屋の片隅に戻った僕は思ったんだ。
あれは2つとも狂っていると。
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