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よし、もう痛くない。そもそも痛みなんか数十秒耐えればなんとかなる。痛いの痛いの飛んでけぇ~、あれはあながち間違ってない。
飛ばした痛みが、どこか薄ら暗い隅に溜まって混ざって沈殿して、何かよからぬ大きな痛みが満ち溢れてこなけりゃいいけど。
「あーもぉ、うろうろすんなその辺適当に座れ」
ぴしゃりと言ってやった、気分は " オ ス ワ リ " 。ったく勢いも図体もいっぱしなのに、極端におろおろしやがって。
「お、おう」
「ほら、飲め」
「お、分かってんねぇ、しゃ、お疲れッ」
好物の缶ビールをぶら下げりゃ、途端に耳がピンと峙ちキラッキラの目でビールだけを見つめてやがる。くれるの?飲んでいいの?ちょうだい、ちょうだいちょうだい。全身で言ってやがります。しまいには涎まで垂らすんじゃないかと観察したくなるほど。いや、しないけど。いやいや、垂らしたら尻蹴り上げるけど。
「おかわりは自分で持ってきてくだい」
「おうよ、お前のは俺が持ってくんよ」
彼、凄く嬉しそうです。なんなんでしょうまったく。
2人でプルタブを開ける。プシュっとそそる音がしてカツンと簡易的乾杯が済むと数秒お互いがお互いに無関心になる。ビールを喉に流し込むという行為のみに集中。
「あ――――――――っまじうめぇ」
吠えながらソファーに大の字ダイブ。確かに美味い。ビールの存在価値はこの一口目にあると僕は思います。
「で?何か御用ですか?」
ソファーを占領されたので、僕はベッドに腰を下ろした。
「で?何で脱いでんの?」
「ベッドに乗るから」
「へ?ベッドに乗るのに着替えんの?」
「何故聞く、見りゃ分かりますよね」
「いや、さっぱり分かんねぇ」
「分からない意味が分からない。ベッドへあがるのに外出した服で上がるんですか?ないです、外出した服でベッドへあがりません。本当はシャワーを浴びて部屋着に着替えたいところですが来客中ですので控えた結果、着替えですが何か」
「その冷たい顔もそそる。良い、全然良い、文句なんか一個もねぇ、あるはずがねぇ。着替えろ、着替えろじゃんじゃん着替えろ。むしろ手伝いまっす」
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