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買い手があれば体を売る。こんな手軽な商売は他にはない。きっかけはいつだったか。保護司の紹介でこの店に世話になり始めてすぐだった気がする。アメリカ人のゲイカップルが店が終わってゴミ出しをする僕に声をかけてきた。3人で楽しめないかと。
酷いものだった。
特製のマリファナはご丁寧にロヒプノール粉末入り。通称レイプドラッグ。よくもまぁこんな殺生な通り名がついたものです。
行為自体はぼんやりとしか思い出せないが意識が戻って見た自分の下半身血まみれには正直引いた。
でも、別にただそれだけ。
「はは、案外そっけないな。いや、かまわないのだが、誘うのに少し緊張していたので拍子抜けしたよ」
笑うと目じりに皺がよる。尖った頰骨と薄い唇はこの人の育ちと品の良さを際立たせた。
「深夜回りますがよろしいですか?お急ぎなら時間つくりますが」
もの言いたげな目が僕を見ている。何だろうかと考える。やはりその気になれないのなそう言えばいいし、時間はそちらに合わせると言ったのだから問題ないはず。
「深夜回って構わないよ、何時でも待っているから」
空いたカクテルグラスをスッと差し出すとその人はそのまま店を出て行った。
コースターの下には1万札と名刺が1枚ずつ。
「ありがとうございました」
僕はポケットに名刺をしまうとなだれ込んできた学生達の元へオーダーを取りに行った。
僕が売春するようになったのはいつからだっただろうか。あのアメリカ人達に手酷く遊ばれてからずっとだったように思う。
客は毎日ひっそりと僕の噂を嗅ぎ付けて店へやってくるようになった。
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