第1話 スライムを拾った青年

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第1話 スライムを拾った青年

 俺の名前はギルバート。まぁ、どこにでも居る村人みたいなもんだ。人々は俺を愛称を込めてギルと呼んだりするが、それは今は割かしどうでもいいんだ。俺は今、『どこにでも居る村人』を卒業しようとしている──。 「待て、魔物の出る森に行くのかギル。危ないぞ、やめておけ」 「父さん、これは俺の個性に関する一大事なんだ。すぐに戻って来るから!」 「やられるんじゃないぞ!せめて短剣ぐらい持っていきなさい!」  俺は短剣を魔物の出る森に持っていくつもりはない。何故かと言うと、俺は魔物を飼いならしてモンスターテイマーの職業に就いてみようとこの頃計画していたのだ。飼いならすのに武器は不要。というわけで、比較的弱めの魔物が出る近くの森へ俺は向かった。 『ギャギャッ』 『クエーックエックエッ』  テンプレ的な魔物が至る所にいる。こちらが敵意は無いぞ、と両手を見せると、何で襲わないのとでも言いたげによそよそしい顔で見つめてくる。モンスターテイマーはこういう羞恥心にも勝たなくちゃいけない。  そして、しばらく歩くと 一匹のスライムに目が留まった。 『プル?』 「お、スライムか」  スライム──この森でも一番弱い魔物で、食物連鎖の一番下でもある。やられたスライムの残骸は大地の栄養となり土へと還っていく、と本には書いてあった。本当かは分からないが、そうだとしたら生態系の基礎を密かに守っている魔物なのだろう。 『プルプル…?』  見るからに弱そうに怯えている。 「大丈夫、襲ったりしないって」  武器などは持っていない事を見せると、スライムは怯えが止まった。 『プル?プルプル?』 「えーっと何て言ってるのかは分からないけど、俺と一緒について来ないか?」  嬉しそうにプルンプルンと飛び跳ねるスライム。 『プル!プル!』 「よしよし、じゃあ今日からお前の名前はジェルな。分かったか、ジェル?」 『プル♪』  意思疎通は何とか出来た。さて、問題は連れて帰った後の話なのだが……
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