夢見るダイエット

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 夜、家に帰るとシャワーを浴び、スウェットに着替え、すっかりくつろいだ気分でテレビを見ていた。するとミニキッチンのほうから奇妙な物音が聞こえてくる。ガサ……ガササ……と、何かを漁るような音だ。おや、と思い、背もたれ代わりに寄りかかっていたベッドの縁から頭を起こして、耳をそばだてた。  といっても狭い一ルームのことなので、歩けば五、六歩の距離の、すぐそこだ。一応扉はあって部屋と遮られてはいるものの、ガサ、ガササ、という音は、耳のすぐ隣で立てられているような生々しさがある。  音は、聞こえたと思った次の瞬間には、さらに大きく、近づいてきたようだった。  洗ったばかりの髪がじとりと汗ばむ。捲くったスウェットから覗く腕が、緊張で強張る。テレビの音がすっと後ろに引いていく。  突然ドアがバタンと開いた。  そして、自分と同じようなスウェットを着た人物がずかずかと入ってきて、声を上げる間もなく、どっかと座った。自分のすぐ前に。  その人物は両腕に、戸棚で見つけたらしいお菓子の袋を抱えている。ポテトチップス、麦チョコ、ビスケット、揚げ煎餅、ポッキー……あんなに置いていただろうか、と思うくらいたくさん。
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